尿失禁でお悩みの女性は多数いらっしゃいます
中高年の方にとって、尿失禁は決して珍しい問題ではなく、社会的な課題となっています。尿失禁は、排尿を適切に制御できなくなり、尿意とは無関係に尿が漏れてしまう状態を指し、日常生活に悪影響を及ぼし、精神的なストレスも大きくなります。
尿失禁の原因は多岐にわたり、加齢に伴う膀胱の筋力低下や収縮機能の衰え、女性の場合は出産や更年期の影響などが挙げられます。男性の場合、前立腺の疾患や膀胱炎などの病気が原因となる場合もあります。
尿失禁は、周囲に知られることへの抵抗感や羞恥心から、自己肯定感の低下に繋がることがあります。また、社交的な場面や長時間の外出への不安、寝具の汚れの心配など、日常生活の多くの場面でストレスを感じる可能性があります。
しかし、尿失禁は適切な治療と対策で改善が期待できます。尿失禁による生活の制約を減らし、快適な日常生活を送るためにも、専門医のサポートを受けることが大切です。1人で悩まず、適切なケアを取り入れることで、快適で前向きな生活が可能になります。お悩みの方は当院までお気軽にご相談ください。
尿失禁の種類
腹圧性尿失禁
くしゃみや咳、走る、ジャンプ、重い物を持ち上げるなど、腹部に強い圧力がかかった際に尿が少し漏れてしまう状態です。骨盤内の臓器を正常な場所に維持する骨盤底筋群の弛緩によって尿道が降下することや、尿道の出口を閉じる尿道括約筋の機能低下が主な原因となります。尿漏れパッド1枚で1日過ごせるくらい軽度の場合は、抗コリン薬を使った薬物療法や骨盤底筋トレーニングで改善が見込めます。しかし、膀胱や子宮の下垂や膀胱瘤を併発している場合や、座る際などに常に尿漏れがある場合は、手術で尿道や膀胱を元の場所に戻す必要があります。特に女性は、妊娠・出産、更年期、閉経の影響で発症しやすく、40歳以上の女性の30%が発症していると言われています。
切迫性尿失禁
膀胱が敏感になり自分の意思とは無関係に収縮し、尿が溜まっていない状態でも急激な尿意が生じ、我慢できずに尿を漏らしてしまう状態です。尿意切迫感や頻尿を伴い、進行すると切迫性尿失禁(トイレに間に合わず失禁してしまうこと)に繋がります。日本では40歳以上の女性の10%程度で過活動膀胱の症状が起こり、そのうち50%程度に切迫性尿失禁が起こると言われています。
過活動膀胱は、神経因性(排尿を制御する神経や脳の異常によるもの)と非神経因性に大別されます。
神経因性過活動膀胱
膀胱の活動は、脳からの指令で制御されており、脳は膀胱からの情報を受け取り、適切に判断します。脳血管障害(脳出血や脳梗塞など)、パーキンソン病、多発性硬化症、脊髄損傷などにより、脳と膀胱を結ぶ神経回路に異常が生じると、神経因性過活動膀胱に繋がります。
通常、膀胱は尿が溜まったことを脳に伝達し、脳は排尿可能な状況になると排尿の指令を出します。この指令を受けた膀胱や尿道が協調して排尿を行います。しかし、神経に異常が起きた場合、膀胱にわずかな尿しか溜まっていなくても激しい尿意が生じる、膀胱や尿道の筋肉の収縮・弛緩が正常に機能しなくなるなど、過活動膀胱の症状が現れます。
非神経因性過活動膀胱
骨盤底筋の異常
女性の骨盤内には、膀胱や尿道だけでなく子宮などもあり、これらの臓器は骨盤底筋群によって正常な位置に保持されています。しかし、妊娠や出産で骨盤底筋群がダメージを受けることや、加齢に伴い筋力が低下したりすることで骨盤底筋群が弛緩します。骨盤底筋群の損傷や弛緩によって臓器が正しい位置を維持できなくなると、排尿の仕組みが正常に機能しなくなり、過活動膀胱が起こり急激な尿意、頻尿、尿漏れなどの症状が現れます。
その他の原因
神経や骨盤底筋群に異常が見られなくても、過活動膀胱を発症することがあります。膀胱の知覚過敏など、様々な要因が複合することで起こると言われており、原因を特定できないケースも多いです。
混合性尿失禁
腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方の症状が見られる状態です。過活動膀胱の症状で受診される方に最も多く見られますが、切迫性尿失禁の症状の方が激しい場合もあれば、腹圧性尿失禁の症状の方が激しい場合もあり、症状の程度は患者様によって差があります。当院では、問診で症状や病状について詳しく確認し、患者様それぞれに適した治療をご案内します。
尿失禁の原因
尿失禁は、泌尿器疾患の他にも多岐にわたる原因が考えられます。
膀胱腫瘍
膀胱に発生する腫瘍が尿道を圧迫し、尿失禁の原因となることがあります。
膀胱機能障害
膀胱の筋肉の協調運動が乱れ、蓄尿・排尿機能が正常に働かなくなることで、尿失禁が起こる場合があります。
神経障害
脳や脊髄の異常によって膀胱の制御が困難となり、尿失禁が起こる場合があります。
糖尿病
糖尿病に伴う神経障害や膀胱機能障害が原因で、尿失禁が起こる場合があります。
女性特有の問題
出産や更年期によって膀胱の支持組織の弱まることで、尿失禁が起こる場合があります。
お薬の副作用
特定のお薬やお薬の組み合わせにより、膀胱の神経や筋肉が悪影響を受け、尿失禁が起こる場合があります。
精神的要因
不安やストレスなどの精神的要因によって膀胱機能が影響を受け、尿失禁が起こる場合があります。
尿失禁の治療
薄い尿漏れパッドで1日過ごせるくらいの軽度の尿漏れであれば、骨盤底筋群のトレーニングを継続することで改善が期待できます。筋肉は何歳になっても鍛えることが可能ですが、効果を感じられるようになるまでには一定の時間が必要です。ご自宅で手軽に取り組めるトレーニングを根気強く続けることで、症状の改善と維持に繋がります。また、肥満の方は適正体重まで体重を落とし、その状態を維持しましょう。
切迫性尿失禁には、薬物療法が効果的なケースが多く見られます。また、水分を飲む量やタイミングの調整、尿意を我慢する膀胱訓練、骨盤底筋群トレーニングなども有効です。
溢流性尿失禁の場合は、原因となっている疾患の治療が必要で、併せて排尿困難の改善と残尿量の減少を目指した治療を行います。
機能性尿失禁は泌尿器の機能的な異常ではなく、身体機能の低下や認知症などが原因で起こるため、トイレまで簡単に移動できるような介助や生活環境の整備が求められます。
これらの保存的療法では効果が不十分な場合は、不安定な尿道を支える手術が検討されます。近年では、尿道スリング手術(TVT手術、TOT手術)が普及しており、下から尿道を支えるテープには耐薬品性が高いポリプロピレン(PP)メッシュが採用されています。この手術は、効果が長く続き、身体への負担が少ないメリットがあります。
当院では、手術を受けたいという患者様を提携先の高度医療機関にお繋ぎし、すぐに適切な治療を受けて頂けるようサポートしています。
尿失禁の治療は、原因や症状の程度によって適切な方法が異なります。正確な診断に基づき個々の状態に合わせた治療を選択することが大切です。尿漏れを年齢のせいだと諦めている方もいらっしゃいますが、不自由のない生活を長く続けるためにも、尿漏れでお困りの方は当院までご相談ください。