泌尿器のがん・フォロー

泌尿器がんについて

泌尿器系のがんの中で、前立腺がんは日本人男性において最も発症率の高いがんであり、およそ9人に1人が罹患すると言われています。前立腺がんは、PSA検査という腫瘍マーカー検査によって早期発見が期待できるため、ガイドラインに沿った治療が有効で、予後も良好です。泌尿器系のがんでは、前立腺がんと膀胱がんが高齢になるにつれて発症しやすくなり、高齢化社会の進展に伴って罹患数が増え続けています。

前立腺がん

前立腺がんの原因として特定されているのは家族歴で、近親者に前立腺がんの既往歴がある場合は、40代を迎えたら積極的にPSA検査などのスクリーニングを受け、早期発見に努めることが重要です。家族歴の他には、前立腺肥大症や前立腺炎などの病気、食生活の欧米化、メタボリックシンドロームなどと関連があると言われています。
前立腺がんは、PSAという腫瘍マーカーを測定する検査によって早期発見できます。PSAは血液検査で測定できるため、近年では検診でも広く取り入れられています。PSA検査で4.0ng/ml以上の数値が検出された場合、前立腺がんの可能性がありますが、前立腺炎や前立腺肥大症などによっても数値が上昇する場合があります。これらの病気が疑われる場合、MRI検査や超音波検査を実施します。また、がんの可能性がある場合は、前立腺針生検によって組織を採取し、確定診断に繋げます。発症初期の前立腺がんは自覚症状が少なく、進行すると排尿障害や血尿が現れることがあります。さらに進行すると、骨やリンパ節などに転移する可能性があります。前立腺がんの治療は、手術・ホルモン療法・放射線療法などが選択されますが、悪性度が低い場合は直ちに積極的な治療を行わず、定期的にPSA検査を実施して経過を観察することもあります。高齢者や転移が見られる場合は、ホルモン療法が選択されます。

健康診断や人間ドックでPSA値が高いと指摘されたことはありませんか?

近年、健康診断や人間ドックでPSA検査を行うことが多くなっています。PSA検査は、前立腺がんの腫瘍マーカーを測定する検査です。腫瘍マーカーは、主にがん治療を受けた方が再発の有無や治療効果を確認するために用いられますが、PSAは前立腺がんの早期発見に役立つことが知られています。ただし、PSA値が高いからといって、必ずしも前立腺がんであるとは限りません。前立腺炎や前立腺肥大症などの他の疾患でもPSA値が上昇することがあります。そのため、PSA検査はあくまでも前立腺がんの可能性を確認するためのスクリーニング検査として位置づけられています。しかし、PSA検査は前立腺がんの早期発見に非常に有効な手段ですので、PSA値が高いと指摘された場合はなるべく早めに当院までご相談ください。

膀胱がん

膀胱がんの50%程度は、喫煙が発症に関与していると言われており、喫煙は膀胱がんの最大のリスク因子です。また、ゴム製品や塗料の製造に使用される芳香族アミンという染料も膀胱がんの誘因物質で、これらの物質を吸い込む職業に従事している方は膀胱がんを発症しやすいとされています。
膀胱がんの発症初期は、痛みがない肉眼的血尿が症状として起こります。目で確認できる血尿が現れた場合は、すぐに当院までご相談ください。また、頻尿を訴えて受診し、超音波検査で膀胱がんが見つかるケースもあります。
尿を採取して尿細胞診を行い、膀胱内視鏡検査や超音波検査で病変の有無を調べます。確定診断のためには組織を採取して病理検査を行う必要がありますが、膀胱がんでは特有の病変ができるため、膀胱鏡検査で識別できることがあります。
内視鏡によって腫瘍を切除し、切除した組織の病理検査の結果に基づいて確定診断し、その後の治療方針を決定します。内視鏡による切除のみで経過観察となることが多いですが、病状によっては膀胱全摘出を要する場合もあります。膀胱がんは、早期発見できれば高い生存率が期待できますが、転移を起こしている場合は5年生存率が低下します。早期発見できるよう、当院では、健康診断の尿検査などで尿潜血陽性となった場合も受診を推奨しております。採尿による尿細胞診、膀胱内視鏡検査、超音波検査などの結果を基に適切な診断をしますので、お気軽にご相談ください。

腎盂・尿管がん

腎盂・尿管がんは、腎臓の腎盂や尿管に発生するがんで、膀胱がんと同じ種類の組織から生じます。膀胱がんと同時に見つかる場合もあります。
膀胱がんと同じく発症初期は血尿が起こり、尿を採取して行う尿細胞診や超音波検査で腎盂・尿管がんの懸念がある場合は、造影CT検査に対応している高度医療機関にお繋ぎします。尿細胞診では、膀胱鏡を用いて尿管までカテーテルを挿入して尿を採取することがあり、多くの場合、この検査結果に基づいて治療方針が決定されます。症例によっては、麻酔下で尿管鏡検査を行うこともあります。
腎盂・尿管がんの治療は、転移がない場合は腎尿管全摘除術が行われることが多く、転移がある場合は抗がん剤治療が行われます。一般的に予後不良とされていますが、がんが浅い層に留まっている段階で早期発見できれば、高い5年生存率が期待できます。膀胱で再発する可能性が高いため、治療後も定期的に検査を受けることが大切です。

腎細胞がん

尿を生成する腎実質に生じるがんで、長期透析を受けていると生じる場合があります。早期発見のために、定期的に超音波検査を受けることが効果的です。肥満・喫煙・高血圧がリスク要因となり、初期段階では自覚症状が乏しいです。病状が進行すると、側腹部膨満や血尿などの症状が起こります。
早期発見できれば、腎臓の一部のみを切除する手術が選択可能となり、健康な腎臓組織を温存することで腎機能の維持が期待できます。放射線療法は効果が期待できませんが、転移が見られる場合も、免疫チェックポイント阻害剤や分子標的薬などを用いた治療が効果的です。なお、様々な副作用が発生する恐れがあるため、高度医療機関での治療が必須となります。

精巣がん

20代~30代の若年層に多く見られるがんです。精巣の結節や肥大、痛みなど、比較的早期に自覚しやすい症状が現れます。受診を躊躇って進行させてしまう場合もありますが、完治できる可能性が高い疾患であるため、睾丸に異変があれば躊躇せず、なるべく早めにご相談ください。
腫瘍マーカー検査では、がんが存在していても高い数値が出ない場合があります。精巣がんの疑いがあれば早急に摘出手術を行い、組織診断を受けることが大切です。精巣がんには多様な種類があり、ガイドラインに沿った抗がん剤治療が効果的です。

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